エアプランツ(育ち方)

チランジア コットンキャンディー

【品種名】

チランジア コットンキャンディー/セレリアナ/コルビー/ハリシー

【魅力】

花がちょっと変わった風貌で、色鮮やか。観る価値あり! 実はパイナップルの仲間らしく、実際に「パイナップル」を育てたこともある私としては、その形に頷くばかりです。我が家のエアプランツは全て銀葉系。葉の表面に生えている白い毛が愛らしい。

土が要らないのは言わずもがなで、成長は早くないものの、考えるのは水やりと置き場くらい。普通の植物よりはずっと簡単。手乗りサイズには変わらないとはいえ、生き物としての重量感が感じられるくらいのボリュームに育つと感慨深いものがあります。

【目次】

  1. お世話(水やりなど)
  2. 特徴(花・葉・根など)
  3. 繁殖(種・実生など)

お世話(水やりなど)

【我が家での栽培環境】

春~秋:最上階の屋根無し南向きベランダ。雨ざらし、かつ風通し良好。(日差しは午前中~午後一くらいまでで、それ以降は日陰となり西日は当たりません)

冬:最低気温5℃前後を境に室内へ。窓際のレースカーテン越しの光があたる場所です。

一年を通すと細かくは以下のように動かしています。

3~4月:室内から屋外へ移動、フェンスにハンキング。遮光なし。
5~6月:遮光70%のネットを上に展開。位置は変わらず。
7~9月:梅雨明け頃からハンキング位置を床ギリギリに移動(日照よりも乾燥防止)。
10~11月:段階的に5~6月、3~4月の設置と同じ状況に戻す。
12~2月:室内へ移動。

フェンスハンキング&遮光ネット 20年5月
フェンスハンキング&遮光ネット 20年5月
室内の花台に置く&掛けた状態 19年12月
室内の花台に置く&掛けた状態 19年12月

【水やり】

この植物の活動時間帯は夜なので、水やりも夜に行います。夕方くらいにあげられればベストなんでしょうが、仕事の都合上、暗くなって家に帰ってから寝る前の間になっています。

遮光ネットを使っている暑い時期はほぼ毎日、それ以外の時期は3日に1回くらいの頻度です。

通常は霧吹きで全身にまんべんなく吹き付け。面倒な時はジョウロで上からかけます。全体を水に浸けてしまうソーキングは、ハンキング用のカゴへ植え直しが手間なので行いません。

冬場は室内のため霧吹き場所にもちょっと困る…ので、風呂場で霧吹きしています。濡らした後は電気を消してそのまま風呂場に放置、翌朝まで換気扇を回しておけば、朝には下が少し濡れているくらいまでに乾いています。

【用土・肥料】

土は使いません。代わりにマルチバークを敷いてその上に載せるという方法をとっています。紐や金属線で植物を縛って固定するのは嫌だなぁと思っているので、あくまで「載せている」だけです。

ハンキング用のカゴは100円ショップで販売されている、台所用のワイヤーネット。本来は石鹸などを入れるためのものですね。植物の高さの半分くらいまでカゴの壁があれば、少々の風で飛んでいってしまうことはありません。

カゴの穴が大きくバークがこぼれてしまう時は、洗濯ネットを切って内側に敷くと防げます。バークが不足してしまったら、ちぎったスポンジで嵩増しすることもできます。

マルチバークこぼれ防止の洗濯ネット加工
マルチバークこぼれ防止の洗濯ネット加工
バークを詰めてエアプランツを載せた図
バークを詰めてエアプランツを載せた図
湯切りならどうか 屋外だと風で飛びます…!
湯切りならどうか 屋外だと風で飛びます…!

肥料は成長期となる春~秋に月1~2回程度、液肥の「ハイグレード」を霧吹きで与えます。あまりたくさんやると表面にコケが生えることがあるらしいので、気持ち程度の頻度にとどめます。

霧吹きの代わりに、上の写真のトレーにカゴごと置き、ジョウロで液肥を全体にかけて数時間放置することも。当然植物の部分は間もなく乾くものの、こうするとバークが濡れた状態をいくらか保つことができ、そこに張っている根からも多少は吸収してくれているのはないかなと思っています。

【病気と害虫】

これといった害虫や病気の被害にはあっていません。ハダニがいることもあるんですが…害を受けたと視認できるほどにはならず。

【主なメンテナンス】

手入れという手入れはありません。春や秋に行う屋外⇔室内移動の際に枯れた下葉や葉先を切り捨てたり、咲き終わった花を摘むくらいのものです。

特徴(花・葉・根など)

【開花期】

コットンキャンディー:1~2月
セレリアナ:4~5月
コルビー:1~3月
ハリシー:未開花
※年によっていくらか前後します。

【花・コットンキャンディー】

大きくふっくらとした鮮やかなピンク色の「つぼみ」が、最も目を惹くポイントでしょう。葉のわさわさ具合をコットンと表すなら、キャンディーは花の愛らしさを例えたのだろうと思えてなりません。

「つぼみ」と言っても、あたかもそう見えるだけであって、このピンクの塊は本物の花を守るための「苞(ほう)」です。実際のつぼみは苞の隙間に隠れていて、3枚の白~やや紫色の花弁を持った花が、苞から頭を出すようにして咲きます。

この本来の花単体は数日ほどで萎んできますが、この苞が色づく頃から既に見栄えがする状態なので、楽しめる時期としてはかなり長いと言えるでしょう。

コットンキャンディーの花 20年1月中旬
コットンキャンディーの花 20年1月中旬

個体の中心部が膨らんでくると花が出てくる前兆です。出てきたばかりの頭は緑で、まだ色づいてはいません。

その年の気候や栽培環境にもよりますが、我が家では年が変わる前後にこれくらいの状態になっていることが多いです。(次の写真はやや遅めになった2月のものです)

花の頭が見えた頃 19年2月
花の頭が見えた頃 19年2月

花序全体が出てきた頃には、きれいなピンク色に染まっているでしょう。このあたりからもう花として鑑賞できるんじゃないかなと思います。

その後、花序ひとつ分くらいまで花茎が伸びます。それから次第に苞と苞の隙間が開き、中の本当の花が見えてきます。開花は下の方から順ですね。

これまでのピンク一色のキュッとした塊も可愛らしいものでしたが、苞のピンクからポンポン飛び出す花の白、その間に覗く雄しべの黄色、というチャーミングな色合いへと花全体の趣が変わっていきます。

色づき始め 20年12月
色づき始め 20年12月
花茎の伸び 19年3月
花茎の伸び 19年3月
開花の様子 20年1月中旬
開花の様子 20年1月中旬

花後は花茎の根元あたりに子株が発生し、先端を切った花茎は次第に目立たなくなっていきます。どうやらコットンキャンディーは花1つあたり平均2つの子株がつくようで、つまり年々倍になっていきます!(限度はあるでしょうけども)

次の写真に花が合計9本あるのがわかりますでしょうか。もともと1株の個体だったのですが、1→2→4→8のように、ほぼ倍に増えていった結果です。さすがに一斉開花は負担がかかるのか半分ずつの開花だったものの、その分だけ鑑賞期間は長くなりました。

多頭株の開花 21年2月下旬
多頭株の開花 21年2月下旬

【花・セレリアナ】

やや膨らみのあるストロー状の花弁から、雄しべ雌しべが束になって飛び出した形。花びらの紫、雄しべの黄色、雌しべの白、そして植物本体の緑、とコントラストが美しい花です。花序も部分的にピンク~赤に色づきます。

花の形状からして地味な部類に入ってしまうかもしれませんが、咲くまでにそれなりの年月がかかったこと、花序が本体に比べてやや大きめなことなども含め、咲くと感慨深いものです。

花は下の方から次々に咲きますが、ひとつひとつは1~2日程度しかもちません。咲いたらすかさず写真に収めておきましょう。

セレリアナの花 21年4月下旬
セレリアナの花 21年4月下旬

花をつけた個体は16年秋に購入、21年春の開花で、丸4年かかりました。花をつけるのは株の充実度などにもよると思うので、20年秋(つぼみが出てくる直前)の写真をご参考までに。

膨らんだ「壷」部分はこぶし大、葉先までの高さがこぶし2つ分くらい(約18cm)です。

壷部分はこぶし大 20年11月下旬
壷部分はこぶし大 20年11月下旬

花は2月頃、いつも新しい葉が出てくる場所から何か丸い塊が上がってくるところから始まります。

次第に花茎が伸び、先端ではハナアナナスに似た花序(商業施設にたまに置かれているタガメのような花の観葉)が展開していきます。真上から見ると星形、中央にひとつで計6個つきました。

現れた花序 21年2月下旬
現れた花序 21年2月下旬
広がり始めた先端の様子 21年3月中旬
広がり始めた先端の様子 21年3月中旬
真上から見ると星形 21年4月上旬
真上から見ると星形 21年4月上旬

4月も終わりに近づくと、羽状にまとまっている穂の隙間から、円錐状で紫色のつぼみが現れてきます。つぼみが伸び、さらに先端から雄しべ雌しべが伸びたら開花完了。

花序全体の赤みは、咲き進んでから濃くなったように思えます。

色づき始めた花序 21年4月中旬
色づき始めた花序 21年4月中旬
開花した全体像 21年4月下旬
開花した全体像 21年4月下旬
色付きが濃くなった花序 21年5月上旬
色付きが濃くなった花序 21年5月上旬

実はこの後、鞘のようなものが現れました。同時期に咲いていたチランジアは無く、この株のみで自家受粉させてみただけだったので驚き。(コットンキャンディー、コルビーともに自家受粉しません)

…そして、種が採れるかと期待して待っていましたが、年が明けても特に変化なし。試しに鞘を割ってみると、本来は種になるであろう構造はあったものの、成熟が進んでいる様子はありませんでした。

時期をおいて再確認しても種ができているようには見受けられなかったため、花茎ごと切断しました。自家受粉したところで不稔なのですな…。以後、花のついたこの株は成長が見られず、根元から1つ生えてきた子株が元気よく育っています。

思わせぶりな鞘 21年9月中旬
思わせぶりな鞘 21年9月中旬

【花・コルビー】

花の形、色合い、花持ちなどは先述のセレリアナとほぼ同じ。花のひとつひとつの配置は中心から円状で、普通な感じのつき方です。

コルビーの花 22年1月上旬
コルビーの花 22年1月上旬

年によりますが、年末~年明けくらいには株の中心が膨らみ、花序の先端が見えてきます。このあたりはコットンキャンディーの方に似ていますね。

見え始めた花序 19年12月下旬
見え始めた花序 19年12月下旬

しばらくすると紫色のつぼみがススッと伸びてきます。が、ここから開花するまでが長め。「まだ咲かないのかな?」と思ってしまうくらい足踏みします。じっくり待ちましょう。

先端から雄しべ雌しべが出てきたら開花ですが、やはり数日で終わります。色合いが鮮やかなうちに写真に撮っておくことをおすすめします。

花が咲いた後はその株はもう成長しません。しばらくすると株の根元あたりに1~2個の新しい子株が生えてきます。

成長しつつあるつぼみ 20年3月上旬
成長しつつあるつぼみ 20年3月上旬
コルビーの花序を真上から 20年3月上旬
コルビーの花序を真上から 20年3月上旬

【葉・コットンキャンディー】

白い毛に覆われてはいるものの一本一本を視認できるほど太くはなく、触れても剥げることがそれほどありません。

葉本体は適度に柔軟性もあり、わしゃわしゃ触ったところで傷らしい傷もつかず、生育面だけでなく物理的に?強健種だなと思わされます。我が家で一番優しく扱っていないエアプランツです。でも花は一番鮮やか。すごい。

コットンキャンディーの葉と子株 20年5月上旬
コットンキャンディーの葉と子株 20年5月上旬

葉の広がりもあって一株でも存在感を放ちますが、年々子株が増えていき群生株に育ちます(この状態をクランプというそうです)。

次の写真のトレーはA4用紙が入るサイズ。大人の手が十分に隠れます。重量やスペースの関係で置き場を考えていく必要はありますが、貫禄と花数を思えば嬉しい悩みだと言えますね。

群生株へと成長 21年11月下旬 
群生株へと成長 21年11月下旬 

【葉・セレリアナ】

壷型で一方方向に強く湾曲し、まるで動物のサイのような形状。なんだこれめちゃくちゃカッコイイ!というのが購入時の第一印象です。横置きすると、そんなふうに見えます。

成長すると先端は多少うねりが生じ、全体的によりドッシリしてきて、渋いおっさん感が漂います(「花・セレリアナ」の写真参照)。シャープさは薄れますが、これがまたよいのです。

毛は一本一本が見える太さで、どこかに接触すると剥がれることがあります。葉は硬めなので折損する可能性もあります。扱いは慎重に。

セレリアナの葉 16年10月下旬
セレリアナの葉 16年10月下旬

おっさんにも子ができます。花の後に脇から坊やがこんにちわ。密生した白い毛と、小さなくせに強烈な曲がり具合が可愛くてたまりません。親父の方の毛は苔が生えて緑っぽくなっているようですね。

子株もモケモケ 21年9月中旬
子株もモケモケ 21年9月中旬

21年に生えてきた子株も大人になり花が咲き、次の子株が現れました。左右に広がった親株の位置関係から、今度は手前側に生えて来ると思っていたんです…。

これじゃカゴからはみ出てしまう、入れ物も置き場所も考え直し、困ったもんだ!という心配を察してくれたのか、真上に生えてきました。さすが物分かりがいいセレリアナ、よくできた子。

真上に生えた子株 23年9月中旬
真上に生えた子株 23年9月中旬

さてさてセレリアナの湾曲について、もしかして「重力方向に対して上に曲がる性質」ではないかと思いました。というのもこの新しい子株、大して曲がっておりません。

最初から上向きに生えてきたからでしょうか。このカゴは壁掛け時にわずかに手前へ傾くので、ちょうどその角度分だけ背中側へ曲がっているように思えます。21年の最初の子株は、真横に生えたからあれだけ強くカーブしたのかもしれません。

あまり湾曲しない子株 23年10月下旬
あまり湾曲しない子株 23年10月下旬

【葉・コルビー】

こちらも一方方向に湾曲した葉が魅力的。葉色は明るめです。毛は一本が見えるか見えないかといったところ。葉はいくらか柔軟性を持ちますが、毛は触れると剥がれてしまうので大事に扱いましょう。

コルビーの葉 17年12月上旬
コルビーの葉 17年12月上旬

生えてきた子株の葉は四方八方へ広がるようになってしまいました。何故でしょう、理由はわかりません。これではイオナンタと変わらないような気が…。

群生化したコルビー 20年11月下旬
群生化したコルビー 20年11月下旬

こちらのコルビーは23年7月に残念ながら枯れてしまいました。置き場は他3種と同じだったのですけども、降雨直後の日照による蒸れが原因となった可能性があります。皆様もお気をつけて。また他3種に比べて毛量が少ないので、元々日差しへの耐性は低めだったのかもしれません。

【葉・ハリシー】

明るいエメラルドの葉色が爽やか。毛は細かく触って落ちてしまうような感じはしません。ただし、葉は厚めで幅広なものの比較的折れたり千切れたりしやすいので、ご注意を。

ハリシーは100円ショップでも入手できる品種で、私もそこで購入しました。小さくても育てやすく、無事生き残ってくれています。

ハリシーの葉 16年12月上旬
ハリシーの葉 16年12月上旬

購入から約5年。花はまだ咲いていないものの、これが100円だったのかと思えるくらいには成長しました。ここから先が楽しみです。

約5年後の姿 21年11月下旬
約5年後の姿 21年11月下旬

【根の広がり】

エアプランツは葉から水分を吸収するので、根は主に体を固定させるための働きをします。つまり着生ですね。

購入時は根無しのことが多いと思われますが、育てているといつの間にか根を生やします。なかなか生やさない個体もありますが、その状態でも花や子株をつけますので、根が必須というわけではありません。

それでも発根したのを見つけると、「ここで生きることに決めた」と言われたようで嬉しい気持ちになりますよ。

エアプランツの根(ハリシー) 17年7月中旬 
エアプランツの根(ハリシー) 17年7月中旬 

根の量は一般の植物に比べてかなり少ないです。太さや量からして、小さいうちならまだしも、大きく育った体は支えきれないんじゃないかと思います。

また、生えたばかりであっても柔らかくはないので、向きを人為的に変えるのは難しいです。我が家では気の赴くままにさせています。

ハリシーの根 21年11月下旬
ハリシーの根 21年11月下旬
コットンキャンディーの根 21年11月下旬
コットンキャンディーの根 21年11月下旬
セレリアナの根 21年11月下旬
セレリアナの根 21年11月下旬

花が咲いた後に子株まで生えてきたけれど、まだ発根していない例。(22年現在では根があります)

コルビーの根 18年11月上旬
コルビーの根 18年11月上旬

繁殖(種・実生など)

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