【品種名】
オーニソガラム ユニフォリアツム
(近年はアルブカの仲間にくくられているようです。購入時の値札はまだOr.オーニソガラムでした。またユニフォリウム、ユニフォリアータなど名前の表記ゆれがあるみたいです。)
【魅力】
「葉なんて1つあればいいのよ」と言わんばかりに、緑色のゼリービーンズ(お菓子)のような葉1本にすべてを託す潔い生き方。
シュッと立つ様は愛らしく、次第に傾斜していきながらも踏ん張る姿に、つい応援してあげたくなります。そして果てに倒れた姿には哀愁が漂う…単純な形ながらも愉快な球根植物です。
【目次】
お世話(水やりなど)
【我が家での栽培環境】
春と秋:最上階の屋根無し南向きベランダ。直射日光ゾーン(夏のみ白い寒冷紗)、「自作の雨よけ花台」の中、風通し良好。日差しは午前中~午後一くらいまでで、それ以降は日陰となり西日は当たりません。
夏:地上部が無い状態で休眠に入るので、葉が落ちたら掘り上げて夏の終わりまで保管します。球根の掘り起こしと保管の項も参考に。本来は掘り起こさず、風通しがよく雨の当たらない日陰に置いておけばいいのですが…自作雨よけはさすがに暴風雨までは防ぎきれません。不運にも悪天候続きで蒸れて腐ってしまわないようにです。
冬:日差しの角度が低く花台の中は半日陰レベルになるので、晴れが確実な日は花台の上に置いて直射日光を当てます。室内は葉が徒長しやすいため最低気温1℃までは屋外。室内退避の際は、窓際のレースカーテン越しの光が午前中~お昼過ぎまであたるくらいの場所です。
【水やり】
我が家の環境では約1~2週間に1回程度。状況により円柱状の葉がややへこんできたタイミングで実施してもよいでしょう。量は鉢底から流れ出るくらいたっぷり。数日後に葉のへこみは戻り、パンパンに張った円柱状に回復します。
葉がよく伸びる時期(9月~12月)は徒長しやすいですが、ガッチリした葉となるには最優先で光量、次点が水、その次に肥料分のように思われます。
休眠する夏は掘り起こしてしまうので、もちろん水やりはありません。植えたままの場合は月に1回程度、表面を軽く濡らすくらい。球根が小型のため極度に乾燥すると枯死する可能性があるそうです。回数と量が多いと蒸れて腐るのでご注意を!
【用土・肥料】
用土・肥料ページの多肉植物グループに詳しく記載してありますので、ご参考ください。
液肥は秋・春に月1回程度の間隔で施しています。
【病気と害虫】
一般的に虫や病気が発生しやすい夏は休眠中のため、結構安心な植物です。生育期も虫らしい虫はついたことはありません。ただし以下のように葉の見た目が悪くなることも。
葉先の委縮…原因・病名ともにわからないのですが、葉先が次第に枯れ込み中心部が黒変します。腐敗したような軟らかさはなく、ゆっくりと進行します。放っておいても止まりません。複数の株が同時に罹ることもありますが、伝染はしないようです。
何が効くのか不明なので、患部の少し下で葉を切断することで対処します。生育中の葉は中がちゃんと詰まっている多肉質で、切り口からは水が溢れてきますが、最終的に乾燥すると若干内側に凹むような形で固まります。
高温障害…芽が出てから気温30度以上の日が長く続いてしばらくした後、地上に伸びてきた葉に傷みや色抜けが見られました。休眠から目覚めるのが晩夏なので暑さの戻りは仕方ありません。光量確保をしたいところですが、気温が落ち着くまでは様子見ながらをおすすめします。
接触による傷…葉の表面は薄く粉が吹いたようになっており、爪などの硬いものが当たると剥がれてしまいます。一度剥がれるとほぼ回復せずそのまま傷が残るので、できるだけ触らないようにしましょう。もちろんご自身だけでなく、他の個体や植物との接触にも要注意です。
【主なメンテナンス】
葉は1本だけなので、枯葉除去の作業はありません。まっすぐ葉を伸ばすために定期的に鉢を回すくらいです。光に対してはかなり敏感で、仕事に行って帰ってくる頃には葉や花茎が180度向きを変えていることもあります。
【球根の掘り起こしと保管】
地上部が無くなってから2週間ほどすると鉢内の根がほとんどないか数本程度になっているので、球根を掘り上げます。8月下旬~9月上旬には再び植え付けてしまうので保管期間は短いものの、高温で蒸れる・腐るが起こりうるので毎年行っています。
植えたままの方が負担は少ないのでしょうが、腐ってダメになるよりは全然マシ。これまで掘り上げが理由で枯れたと思われる個体はほとんどありません。
我が家の保管場所は下駄箱。涼しい日陰なんてそこしかありません。風通しはゼロですが、要は蒸れなければいいので、除湿剤のすぐ隣が置き場です。
入れ物はみかんネットなどの網なら何でも可。100円ショップで常時入手できる洗濯ネットがおすすめです。実生したての小さい球根でも目の細かいタイプを買えばこぼれません。
球根は掘り上げたら根を切り、キレイになるまで水洗いします。負担が強い処置かもしれませんが、靴に虫などが入ったら嫌なのでね。1週間程度日陰で乾燥させたら下駄箱へ。8月下旬には少々シワが入っているものの、芽や根が生え始め「植えてくれ、早う!」と訴えてくるようになります。
特徴(花・葉・根など)
【開花期】
3月~4月中旬
【花】
花茎も1本のみ。根元近くの太さが3~4mmくらいになる頑丈そうな茎が、高さ30cm程度にまで伸び、先端から1/3くらいまでの位置に10~20個のつぼみがつきます。
花弁は長さ1~1.5cmほどのものが6枚、白~薄い黄色の地に緑の太い縦縞が中央に入ります。夜は閉じますが、日中の全開時は180度以上開き、反り返るほどに。1つの花は数日~1週間程度は持つようです。
おしべは6本でよくある形、花粉は黄色。中央のめしべは1本で先端に毛が生えています。耳かきについてる綿のような感じ。ペタペタした粘液はないですが、花粉を絡めるようにくっつけることができます。
下向きに咲くので、鉢を持ち上げ青空を背景に下から見上げるのがおすすめ。青に白い花がとても映え、おしべの黄色がほどよいアクセントになります。
花は1月中旬~下旬に葉の生え際から現れます。2月には花茎がぐんぐんと成長、穂先のつぼみがポンポン菓子のような楕円球形に膨らんでいきます。そして3月~4月に下から順次開花します。
天気がいいと、花びらはこれくらいまで反り返ることがあります! 普段は6方向への広がりがわかる程度ですが、これはまるで皮をむいたバナナですねぇ。
【葉】
ユニフォリアツムの特徴である、棍棒のような葉。お店で販売されているものや本などによると約5cm程度とのことですが、我が家では14cmまで伸びました。厳しく育てないと太りきれず、ただ背だけが高くなってしまうようです。
葉の成長の勢いは12月頃まで(その後も若干伸びる)。次第に場所を花に譲るように傾いていきます。日に日に斜めになっていくものの、形自体はまっすぐそのもの。つついてもビヨンビヨンすれどヘタレない。重力と格闘する様は、見ようによってはドラマチックであり、どこか滑稽な感じもします。
日光不足になるとかなりの速さで伸長します。一度伸びてしまうと当然短くはなりませんので、傾くのも早くなります。
よく日光に当てるのがしっかりした葉にするポイントのようです。冬も最低気温1℃くらいまで耐えるので、なるべく屋外で。
水やりを厳しくすることでも徒長は抑えられます。ただ、ピチピチの円柱状でなく、何本か縦筋が入るような柱になってしまうのは厳しくしすぎなのかもしれません。難しいですね。
なお、葉の肌には株の個性があるようです。ところどころ緑色が抜けるような肌の別株を購入したところ、翌年も同じような葉が生えてきました。
落ちた葉を輪切りにしてみると…白いスポンジ状の組織で中心に空洞あり。分厚い長ネギのような印象です。成長期の葉は「病気と害虫」の項で紹介したように、組織が詰まっていましたので、葉はやはり光合成のほか貯水槽の役割を兼ねているようです。
もし途中で葉が折損したり朽ちてしまっても…成長期なら再び伸びてくるかもしれません。次の写真は、10月頃に一度葉が枯れ落ちてしまったのにまた地表に出てきたところ。先端は痛々しいですが、再生する可能性もあるということですね。
葉の根元の裂け目は、通常なら花が出てくるところ。ただ2枚目の葉が出てくることもあるようです。1本目ほどの勢いはありませんが、これはこれで可愛いですね。
【根の張り方・鉢の形状】
もじゃもじゃしたヒゲ根で、球根部分は地表に露出させず地中に埋めておくタイプです。なので鉢は深めのものがおすすめ。球根自体はおよそ3cmで100円玉より若干大きい程度。1個なら2~2.5号鉢でちょうど合います。
繁殖(種・実生など)
【受粉】
どうも自家受粉はしないため、別の株が必要です。17年、18年と自家受粉しましたが全く種ができず、19年にもうひとつ買ってきたところ簡単に種が採れました。
花の時期さえ重なれば受粉作業はとても簡単。花が全開状態になる晴れの日の午前中、雄しべと雌しべの先端を交互に綿棒でこするだけ。
受粉後も花は数日開きます。成功したか心配になるところですが、雌しべの先端が花粉でまぶされて黄色く見えるような感じになっていれば大丈夫です。花は下から順に咲いてくるので、全ての花を使うつもりなら2~3週間はチャンスがあるでしょう。
なお、開花期の3~4月には葉は萎れてきて、しまいには枯れ落ちるもののようです(個体差があり長く残るものもある)。ただ葉が落ちても、ため込んだパワーで種の収穫まで進めますので、気に病む必要はありません。
【種】
受粉の結果は1週間ほどでわかります。萎んだ花がトックリのように見えれば成功しています。あとは熟すのを待つだけ!
収穫時期の目安は、鞘が茶色味を帯びて先端が若干開いたころ。鞘は大きく3つの袋に分かれていて、その中にびっしり種が並んでいます。ピンセットで分解し、鞘の殻は捨てましょう。
収穫後はアルブカの種の保存方法を参考に。乾燥材と一緒に容器に入れ、冷蔵庫で種蒔き時期まで保管しておきます。
【実生・種蒔き~発芽】
さて! 初のユニフォリアツム実生です。親株が休眠から目覚めるのは9月頃なので、同じ時期を狙って種蒔きしてみました。
種蒔き日:2019/9/16(種は当年5月に収穫し冷蔵庫保管)
置き場所:屋外のやや日陰
用土:種蒔き用の土(底の方に肥料マグァンプと殺虫剤「オルトランDX粒剤」を少々)、底石なし、覆土ゼオライト数mm、2号スリット鉢&2.5号鉢
水やり:初回のみ「ベンレート水和剤」を溶かしたものを施し、以降は表土が乾き次第の水やりを継続
こんな感じで1ヶ月経過…10月中旬、発芽なし!
乾燥しすぎかと思い、屋内窓辺で腰水…11月初旬、発芽なし!
好光性種子かと思い、鉢2つの覆土を除去…11月中旬、きた!!
みんな上の方で「く」の字に曲がっています。先端についている黒いものが種の殻です。
12月上旬には覆土ありの方も発芽。数はそれほど変わらない状態になったので、光の有無はあまり関係なかったようです。
9月の東京はまだ十分に暑い時期。動きのなさに心配しましたが、確かにそんな頃に発芽したら枯死するかもしれません。過ごしやすい秋も深まってから芽を出すのは納得できる話ですね。
発芽以降、水やりは鉢がやや軽くなってからで間に合っています。光に敏感な性質はもう現れていて、数日おきに鉢回しするくらいに窓の方へなびきます。
※20年に2度目となる種蒔きをしてみました。赤玉土細粒単用(底の方は小粒)、覆土数mm、腰水なし、置き場は親株と同じ屋外を継続。やはり動き出すのは11月中旬くらいからのようです。光量があるので葉はあまり長く伸びていません。
【実生・発芽翌年の春】
翌年3月、1~2週に1回ほどの水やりペース。屋外で親と同じ花台上での管理です。葉の伸びはほぼ停止、土の中では2~3mmくらいの白い球根になっているようです。
3月下旬には葉が枯れてくるものが目立ち、4月はさらに枯れ込み地上部がほとんどなくなります。引っ張ると球根ごと抜ける可能性があるので、枯葉はそのままにしておいた方がよさそうです。
本来ならこのまま夏越しに入りますが、せっかく初めての実生ですので、掘り起こしてみました。2.5号鉢1つで、数えるのが面倒なくらい拾えました。かなり発芽して生き残っていたようです。
おおむね高さ5mm、幅3mm程度のやや縦長、葉の方向が少し尖った形状です。葉と同様、根もほとんどなくなっていました。
一部は土に戻しましたが、さすがにこれ全部を戻す気にもなれません。掘り起こした球根は、一般的な方法で秋まで保管ができるのか?という疑問もあり、保管に挑戦しました。
みかんネットの穴をすり抜けかねない小ささなので、100円ショップで網目の細かい洗濯ネットに包んで下駄箱へ。リビングルームにも置いてみました(少なくとも下駄箱よりは空気の流れはある)。
結果、特に腐ることもなく、どちらでも保管に成功。植え付け後の様子は次をご覧ください。
【実生・発芽から約1年後】
掘り起こさず埋めたままの球根は、枯死せず無事に夏を越せたようです。種からの発芽と違って、先端の折れ曲がりはありません。球根から生えてきたしるしですね。
頃合いは9月の敬老の日あたり。最高気温が30度を下回る日が続くようになるとスイッチが入るのかもしれません。
では掘り起こして保管しておいたものはというと…?こちらも夏を越して目覚めていました!さすがに若干痩せてはいるものの、こんな小さな球根でも干からびるまでは至らず、芽と根が出ています。
早速土にふせましたが、1年目では掘り起こしをしない選択肢もアリかも。芽があれば上下は間違えませんが、なにぶん細すぎる葉を傷めないように植え付ける作業が非常に辛いです。かといって葉が出てないと上下がわかりません。
【実生・それ以降】
正直なところ、植える場所を圧迫するほど生き残るとは思ってもいませんでした。結局生育が良いものを残して処分することに。今後は受粉を花1個分だけにしよう、と家族計画を決めました。
さて! 実生の子たち含めユニフォリアツムの家族写真です。
親:黒鉢のうち中央2鉢
19年播種の大きい球根選抜:黒鉢のうち一番手前側
19年播種の選抜外:茶色鉢の奥側、葉が太い方
20年播種:手前の茶色鉢2つ、葉が細い方
ヒョコヒョコ生えて楽しそうですが、これは過密状態です。スペース不足だと各球が大きく育ちません。播種当年はネコ草のように草ぼうぼうの状態になったとしても、翌年の植え付け時には整理してあげた方がよさそうです。
次の写真はぎゅうぎゅうになってしまった球根。1年前の植え付け時には、各球の間に数ミリの隙間はあったんです。掘り上げてみると縦長な姿があらわに。もっと余裕を持たせていれば、親の形と同じく横に太っていたのではないでしょうか。
以下、19年播種の大きい球根選抜の成長記録。数値は全て太さを表します。
親(参考)葉:約10mm 球根:約30mm
19年播種 葉:約1mm
20年掘起 球根:約3mm
20年植付 葉:約1mm(前年より若干太め)
21年掘起 球根:約10mm
21年植付 葉:約5mm
22年掘起 球根:約15mm
22年植付 葉:約8mm
23年掘起 球根:約20mm
葉は満3年でほぼ親と同じくらいになるのでしょう。球根も生育スペースを確保してあげれば後追いする形で親並みになると思われます。
もちろん花も咲きます! 次の写真は中央列が親株、右の緑の2鉢が実生株です。親子でポンポン菓子のようなつぼみを空へ押し上げて、青に映える黄色の花姿。
観葉目的の球根は単独で植えられることが多いですが、やっぱり球根は球根なので、群生させての開花は魅力的です。チューリップなど花目的のものと比べれば当然鮮やかさに欠けますが、代わりに独特の清涼感があります。要は路線が違うだけのこと。どちらも全力で咲き誇ろうとする姿はエネルギーに溢れていると思います。
【分球】
種以外にも分球で増やせます。20年の植え替え時、球根が分かれていることに気づきました。最初に買った株は購入後4年目で初めての子球です。
この時はさすがにまだ小さかったので親にくっついたまま植え付けましたが、翌21年には親に比べて一回り小さい程度まで成長したので分離。その後22年では親とほぼ同じくらいにまで育ちました。
一般の草花球根のような増殖スピードではありませんが、花芽を伸び始めのうちに切ると葉の持ちが長くなり、その年は成長に専念させられる結果、早く大きくなるような感じがします。
子球がついたまま植えると鉢に複数本の葉が生える状態になり、「ユニ」とは何ぞやと改めて考えてしまいますが…球根に対して葉が1つだから間違ってはいないですね。
↓ハートを押して「いいね」いただけると励みになります!