サンスベリア サムライドワーフ(育ち方)

サンスベリア サムライドワーフ

【品種名】

サンスベリア サムライドワーフ

【魅力】

侍とはよく言ったもの。マッシブな厚みとシャープな白い縁取りの葉姿が精悍な武士を思わせます。

ローレンティー等の薄い葉に比べ、どっしりとした力強さが持ち味。それでいて小柄かつ成長速度はゆったりなので、わずかなスペースでも勇ましい存在感を発揮し続けてくれます。

花言葉は「永久」「不滅」。千歳蘭(チトセラン)というサンスベリアの和名から来ているそうですが…花でなくとも葉そのものが、常にたくましくあれと語っているようですね。

【目次】

  1. お世話(水やりなど)
  2. 特徴(花・葉・根など)
  3. 繁殖(種・実生など)

お世話(水やりなど)

【我が家での栽培環境】

春~秋:最上階の屋根無し南向きベランダ。直射日光ゾーン(夏のみ白い寒冷紗)、「自作の雨よけ花台」の中、風通し良好。(日差しは午前中~午後一くらいまでで、それ以降は日陰となり西日は当たりません)

冬:最低気温10℃前後を境に室内へ。窓際のレースカーテン越しの光があたる場所です。

【水やり】

用土が乾いて鉢が軽くなり、葉にシワが少し入るくらいになってから行う程度です。春・秋は乾きが遅いため間隔をより長くし、成長が止まる冬は断水します。

冬の休眠明けの水やりは、株の中心を見て葉が伸びた跡があるなど活動の兆しがでてきたら再開します。

「サンスベリアは過湿に弱い」と言われ、心配になってつい水やりすると、それが仇になる可能性があります。手のかからないやつ、くらいの感覚でいましょう。

用土の排水性を強化することで、雨ざらしでも耐えることができました。ただし夏の高温期だけです過湿原因と思われる障害は【葉】の項目へ)。やはり雨の当たらない場所がベストでしょう。

【肥料】

春~秋の成長期には、白いボーロ状の緩効性化成肥料「グリーンそだちEX」を置き肥として月に1回程度。冬は水やりもしないので肥料も施しません。

【用土】

雨ざらしにしていたときは、水はけのよい軽石ベースのサボテン・多肉植物用の土に、さらにパーライトを幾らか加えたものを使用していました。

現在は雨よけの中ですが、1鉢を「マッソニアーナ」と同じ、サンスベリアの土と赤玉土(中~小粒)を半々程度+パーライトひとにぎり、という構成に変えてみました。

マッソニアーナ同様、栄養事情がよくなったからか、こんな早さで葉が伸びる品種だったっけ?と思うほど調子がいいです。根も植え替え後1ヶ月で鉢底に達しました。やはり土は大事ですね。

サンスベリアの土を半分使用 比較前 20年10月
サンスベリアの土を半分使用 比較前 20年10月
10日後 中央の葉の伸びに注目 20年10月
10日後 中央の葉の伸びに注目 20年10月

【病気と害虫】

軟腐病と思われる症状が一度生じました。硬いはずの葉が、そっと爪を立てた程度で爪痕がつくほど軟らかくなり、少し押したら水が染み出てくるのです。

異変があるのは一番下の葉だけでしたが、日に日に広がるほど進行が早かったので、その葉を切断しました。以降は発生しておりません。

軟腐病らしき症状 16年11月
軟腐病らしき症状 16年11月

この株は一番最初に買った親株なのですが、葉の変色(枯死?)も経験しました。下の写真のように成長点近くの葉1本全体が茶色くなってしまい、引っ張ったところ簡単にもぎ取れてしまいました。これも再発はなく、今も生きながらえています。

左の親株の葉が変色 17年7月
左の親株の葉が変色 17年7月

何かしらの処置として葉を切断したら、殺菌剤である「べンレート水和剤」を溶かした水を株全体にたっぷりとかけておくことにしています。これはサボテン「なるほど柱」で効果が見られた経験のある処置です。

切断面は無事であれば次の写真のように固まります。

切断から約1ヶ月経った断面 19年5月
切断から約1ヶ月経った断面 19年5月

これ以外に目立った病害虫にかかっていません(過湿原因と思われる障害を除いて)。夏にときどきハダニが葉の表面を走っているのを見かけますが、汁を吸われた形跡は見当たりません。そのあたりの防御力はあるようです。

なお、殺虫剤の「オルトランDX粒剤」も、他の植物に施すついでに少量撒いています。不要な感もありますが念のため。

【主なメンテナンス】

これといってありません。葉の伸びもゆっくりなので剪定いらず。異変に気づけるよう日々観察はしていますが、まったく手がかからないなぁ、というのが正直な感想です。

特徴(花・葉・根など)

【開花期】

本来は8~10月といわれています。しかし、我が家初の開花は、室内退避中の真冬に花芽が上がり、翌年3~4月の開花となりました。在宅勤務で暖房を入れている期間が長くなり、株に季節を勘違いさせてしまったのかも…?

【花】

黒っぽく円筒状のつぼみの長さは約1cm。開くと中は白い6枚の花弁で、直径2cmほど。雄しべ雌しべもほぼ白に近く、一輪だけ見れば清涼な雰囲気です。すがすがしい香りも伴います。

一日の中では夜に花弁が開くようです。室内で夜は電気をつけていますが、それでも日中に陽の当たる時間に開いているのを見たことがありません。

花持ちは1日程度。一斉に開花するわけではないので、最初の花が開いてからしばらくは楽しめます。また、自家受粉はしないようです。

サンスベリア サムライドワーフの花 21年3月下旬
サンスベリア サムライドワーフの花 21年3月下旬

我が家の株が初めて花芽をつけたのは、年も変わろうかという20年12月の下旬。中心から、いつもの葉先と違うモノが伸び始めてきて驚きました。

緩慢ながら成長を続けている他の株もあったので、退避していた室内の温度はそれなりだったと思われます。私の冬の暖房は20℃固定。昼夜の変動を考慮しても15~20℃が続く環境でした。

季節外れの花芽 20年12月下旬
季節外れの花芽 20年12月下旬

花芽は植物本体の背と同じくらいの長さまで時間をかけて伸び、つぼみを複数もつ穂を各所で生やします。つぼみは最初球状で、次第に円筒状に成長していきます。この期間、葉の伸びは止まったままです。

伸長した花芽 21年1月中旬
伸長した花芽 21年1月中旬
さらに伸びた花芽 21年2月中旬
さらに伸びた花芽 21年2月中旬
できたてのつぼみ 21年2月中旬
できたてのつぼみ 21年2月中旬

黒いつぼみが密集する風貌から、どんな強烈な色をした花が咲くのかとドキドキしていましたが、開いてみれば澄んだ花色でした。いかついサムライも心は純朴なのであるな。

なお、この開花した個体は、17年10月に子株として発見、19年9月に株分けしたもので、生後3年経過といったところ。その前に分けた株もありますが、まだ花をつけず、後発が先に咲きました。

開花を迎えたサムライドワーフ 21年3月下旬
開花を迎えたサムライドワーフ 21年3月下旬

【葉】

よく見かけるトラノオなどに比べてずっと肉厚な、表皮の硬い葉がらせん状に増えていきます。先端は鋭く尖り、いろんなものによく刺さるので注意。お世話する人間にも、隣り合う植物にも、遠慮なくブスっといきますので気をつけましょう。

水を蓄えた時は断面が半円形に近くなるほど膨らみます。水分がなくなると次第に谷間が深くなりV字断面のようになっていきます。

水やりをすると元通りに膨らみますが数日はかかります。普通の植物のようにすぐシャンとするわけではありません。特に休眠明けは活動も鈍いのでさらに時間が必要です。

どことなく甲冑のようなイメージ 18年7月
どことなく甲冑のようなイメージ 18年7月

なお、成長点は株の中心のみで、葉の間から脇芽が生えることはないようです。なので頭がもげてしまうと、葉はそれ以上増えません。

先述の「」の項で紹介した開花株には、花茎に隣接して新しい葉がありました。花が終わると成長再開するかと思いきや、年が変わっても全く伸びることなく、次の写真のように「もう終わり」といった感じに変色してしまいました。

花が一度咲くと株としての成長は終わりなのかもしれません。おそらくこの小さな葉先もいずれ朽ちて落ちてしまうのでしょう。もしかしたら「病気と害虫」の項で紹介した親株の葉の変色も、これが理由だった可能性があります。花茎と思われる痕跡もあるので、購入前に花が咲いた株だったのかも。

花後、中央の葉は成長無く枯れている 22年4月下旬
花後、中央の葉は成長無く枯れている 22年4月下旬

成長点を失った場合、根元から生える子株が唯一の希望になります。上の写真の開花株もその後に子を生やしていますから、成長はしないものの活動は続きます。

一番最初から居る頭のもげてしまった親株も、その状態で子株を生やし続け、かつ存命。22年現在で購入後6年目に達します。「あきらめないことが大事」と、身をもって語っているようです。

通算5子目(右が16年に購入した親株) 22年5月下旬
通算5子目(右が16年に購入した親株) 22年5月下旬

【葉・過湿の障害】

サムライドワーフの葉は、一般の植物のように過剰な水分を葉のフチから排出する機能がかなり弱いようです。たまに水滴が生じていることはあるのですが。

代わりに、葉の表面に水分を集めて蒸発を加速させているのだと思います。水分が集まった部分は緑色が濃くなり、まるで地図ができたようになります。露天での雨後または水やり後によく起こり、しばらくすると地図は消えて元の葉色に戻ります。

表面に水分が集まり深緑色の地図ができる
表面に水分が集まり深緑色の地図ができる
乾いてくるといつもの緑色に戻る
乾いてくるといつもの緑色に戻る

しかし、気温が低くあまり活発でない頃にこの地図ができる状態が長続きするのはNG。深緑色の部分が白く変色し、元に戻りません。

変色部位は柔らかく腐るような感じではありませんが、何かしらの組織が死んでいるらしく、日を経るにつれて健全な部位に比べてシワや凹みが見られるようになっていきます。

葉の表面が白く変色 19年5月
葉の表面が白く変色 19年5月
同じく変色 茶色い汁の噴出も見られる 19年10月
同じく変色 茶色い汁の噴出も見られる 19年10月

これまでの経験で「雨ざらしでも耐えられる」という思い込みがダメでしたね。梅雨や秋雨に要注意。

被害を受けてすぐ雨よけに移動し、1週間経過すると、深緑色にとどまっていた部分はいつもの緑色に戻ったため、変色部位がよりはっきりするようになりました。水分を断ったからか、被害の拡大はありません。

変色部位がより鮮明になる 19年11月
変色部位がより鮮明になる 19年11月

初めてこの状態になった19年5月、病気かと思って該当部位を切断処分したことがあります。葉は特に白い縁取りの部分が硬いのですが、文房具のカッターでなんとか切れます。刃は念のため事前に火であぶって消毒しました。

白くなった箇所も切ってみましたが、ここは比較的軽度だったのか、表層だけの異変にとどまっていたようです。

変色部位の少し下で切断 19年5月
変色部位の少し下で切断 19年5月
変色部位の断面
変色部位の断面

次の写真は変色から約1年半経過した被害部位。白いまま硬くなっています。腐っているような感じは見受けられません。まさに古傷状態ですね。

こういう傷を作ることを推奨するわけではありませんが、できてしまったからには趣のひとつとして受け止めることにいたします。美株ではなくなったかもしれない、しかし苦難を乗り越えた証がある、そういう株なのだと。

変色部位のその後 21年5月下旬
変色部位のその後 21年5月下旬

【根の広がり・鉢の形状】

太い根がいくらか生えるようです。深さもあるので鉢はロングタイプがおすすめです。ただし葉が重く硬く何かに引っかかりやすいため、プラ鉢だとかなり転倒します。鉢底に重しを入れるか、焼き物の鉢も候補に入るでしょう。

下の写真は完全ひげ根タイプのサンスベリア・ハーニー(右)との比較。親株からやや浮くように生えてきたので、体を支えるための太さが必要だったとも思えます。

ハーニーとの根の比較 19年9月
ハーニーとの根の比較 19年9月

次の写真はこの太い根が生えてくる様子。若々しい色ですが、ある程度伸びると茶色くカチカチになり、吸水機能があるのかと疑うくらい頑丈な見た目になります。

それでも土に当たる部分には細かい毛根が見られますので、体を支えるだけでなく水分吸収の役割も果たしていることがわかります。

子株から生えた根 直径2~3mmはある 18年7月
子株から生えた根 直径2~3mmはある 18年7月
三脚のごとく体を支えるように生える根(左は親とつながるランナー) 
三脚のごとく体を支えるように生える根(左は親とつながるランナー)

なお、株の基部を浮かせた形での植え付けは面白みがあるのですが、将来的には若干注意です。次の子株となっていくランナーは土を求めるようで、生えてくる株元が地表にあると下向きの角度で伸びていきます。

子株には安定して根を張ってもらいたいものね、わからないではありません。ただそのランナーの先が下向きに鉢壁にぶつかると、そのまま地中に潜っていって地上に出てこなくなります。融通利きません、この子。(そのうち鉢を突き破ろうとするはず。サンスベリアはそういう植物です。)

頑固に潜るランナー 23年10月下旬
頑固に潜るランナー 23年10月下旬

繁殖(種・実生など)

【株分け】

子株は鉢の端から頭を出しているのを見つけるケースが多いです。地中からランナーが横に伸び、鉢の壁に当たって伸びる向きが上方向に変わるようですね。

鉢の隅で頭を出した子株 17年5月
鉢の隅で頭を出した子株 17年5月
やや葉が開いた子株 まだ根はない 17年12月
やや葉が開いた子株 まだ根はない 17年12月

普段は見えない地中で伸び始める子株ですが、まれに地表部でその兆しが確認できることもあります。次の写真は、葉を突き破って出現するランナー。この後少しだけ土に潜って、やはり鉢の壁に当たり再び頭を出しました。

葉を突き破るランナー 21年6月下旬
葉を突き破るランナー 21年6月下旬

勇ましいサムライも、小さなときはとても愛らしい姿です。そこから根が出る状態まで成長させた子株なら失敗も少ないはず。株分けの適期は暑い夏ですが、若武者を独り立ちさせる作業に取り掛かりましょう!

根もあり株分けして全く問題ない 18年7月
根もあり株分けして全く問題ない 18年7月

親株とは細いランナーでつながっているだけなので、カッターやハサミで十分切れます。切り離した後、傷口となる断面がなるべく小さくなるよう改めて切り直します。

切り離された親株側にはあまり根が無いこともありますが、見捨てないでください。親株も植えておけばまた新しい子株を出してくれます。

親株とのつながり 19年9月
親株とのつながり 19年9月
切り離し完了
切り離し完了

切り離し後は数時間~半日ほど切り口を乾燥させます。その後、親株と同様の鉢や土に植え込んで株分け完了。1週間くらい日陰に置いたら、いつもの置き場に戻します。

株分け完了
株分け完了

晩秋になると気温低下で生育が止まっているので、株分けは来年まで待つことをおすすめします。

親株の軟腐病の処置の際、全滅回避策として根もない状態で11月に株分けをしたことがあります。次の写真3鉢ですが何の兆候も見られず、翌春までに干からびて枯れてしまいました。

やむを得ず株分けしたが全て枯死 16年11月
やむを得ず株分けしたが全て枯死 16年11月

「鉢から抜いて下駄箱等に保管し春にまた植える」というサンスベリアの冬越しの荒業を聞いたことがあるので少し期待していたのですが、それもその期間を耐えられる程度にまで成長してなければいけないんでしょうね。

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